在りのままの悩み。無防備な肌は敏感です
「服」という防御が無い美術モデルは、
身体が、その時の環境に晒されます。
暑さ寒さ、湿度には、とても敏感です。
その上、プライベートが晒されるために
精神的な刺激を受け続けます。
メンタル面の鍛錬も必要ですし
ポーズを維持する体力も鍛えないと。
そして、身体が商品でもありますので
その維持は、大事な務めです。
そんな美術モデルならではの悩みを
語っていきたいと思います。
裸になると全身の感度がアップ
人前で、一糸まとわぬ姿になる美術モデル。
大勢の人の目の前で、自分だけ裸というのは
想像以上に不安な心理になります。
合間の休息でガウンを着て視線が遮断されると
一瞬ホッとすることで分かります。
そして肉体的には、完全無防備な状態です。
肌感覚が最も繊細な状態でもあります。
まず全身くまなくリアル「空気」を感じます。
KYの空気じゃないですよ。
部屋の微細な空気の流れ。僅かな温度変化。
人の動く気配。そして光線の具合・・・
音や微粒子にも反応しているかも。
以前書いた皮膚に関する記事をご覧ください。
人の肌感覚は、想像以上に優秀です。
「心は皮膚にある?肌と心の関係」
裸になると、全身を包む皮膚センサー全開。
服を着た状態だと見過ごす繊細な肌感覚です。
人間、無防備な状態で放り出されると、色々と
センサーが働いて感度が上がるみたい。
無意識の中で体温を維持したり、様々な防御
システムが働きます。
ポーズ中に、なぜか羞恥心から解放されるのも
脳内の防御反応があるのかもしれません。
皮膚を着ている
皮膚は、外界と自分を隔てる境界です。
僕という「個性」を生み出しています。
皮膚の最大の役割は外界との防波堤。
しかし動物みたいに、厚い毛皮じゃないです。
保温効果や防御力は、限定的です。
(毛深い人は防御力高いのかな)
ところで、身近な犬や猫。
彼らは、服を着ていないけど、当たり前に
何事もなく過ごしています。
僕らも、躊躇なく見てますよね。
服が無い=裸ですよね。
下の写真を見てください。ちょっと怖い・・・
何か訳あって、胴体毛刈りしたワンちゃん。
ナンデスカ?コノイキモノハ!
「毛」が無いと、妙にヌーディーな感じ。
犬のハダカです。
顔は、そのままだから、犬種は分かる。
毛皮という服を脱ぐ?と微妙ですね。
でもこのワンちゃん。気にすることなく
この状態で散歩とかするんですよね。
う~ん。この状態・・・モデルっぽい。
服を脱いでも、頭は、変わりないです。
裸の本人より、見る側の意識ですけど、
着衣から裸になると別人な感覚になります。
このギャップが、羞恥心の理由の一つ。
通常の僕のイメージが、一変しちゃいます。
脱いでも堂々としたモデルも居ますけど
僕は、まだまだ、その境地は、ほど遠いです。
知り合いの女性モデルの言葉を紹介します。
モデルは、服を脱いでもまだ、皮膚を着ている
経験豊富な彼女の言葉は、奥が深いです。
顔とか手は、いつも「裸」でしょ。
目や唇なんか粘膜。内臓の一部じゃない。
でも、見られても全然平気でしょ。
どんなに可愛い人でも、中味は気持ち悪いよね
(解剖をイメージしてください)
裸は、見れるだけマシだと思うよ。
「要は慣れよ、慣れ。」
そう言われても、ちっとも慣れないです。
女性の方が肝が据わっています。
彼女は、自分を魅せる堂々としたモデルです。
普段は、そんな風にちっとも見えないけど
なぜかポーズを取る姿は、堂々としています。
僕も、そういう風に見えているみたいだけど
何か根本的に違う気がします。
たぶん、男女の差もあると思います。
それに身体的な構造の差も大きいですね。
皮膚が服だと、どうしてもあの飾りが・・・
女性は、見られることに慣れているし
綺麗な自分を見てもらいたい。
美術モデルの大半が女性だというのは
そういうことかもしれませんね。
身体の様子が手に取る様に分かる
生身のモデルさんを描くと、色々気付きます。
蚊にさされた跡、湿疹などの肌トラブルなど
肌表面の様子が見え見えです。
下着や靴下の跡などもそうですね。
その日の肌コンディションも全部見られます。
男性モデルの場合、日焼けした方もいますけど
僕は、中性的を売りとしてもらっているので
日焼けはご法度。日焼け止めが必需品です。
モデルは、生きているので生体反応も見えます
静かに呼吸しているけど、お腹や胸の動き
無意識な筋肉の動きなど様々です。
長時間動かないと、血流も悪くなるので肌にも
変化が見えてきます。
自分でも驚きましたけど、脚の血色が悪い。
白いので、よけいに目立っちゃいます。
しかも膝や腰がガクガク。
休憩中は自分でマッサージです。
ポーズ中に吊りそうなこともあるし、膝が
震えちゃうこともたまにあります。
そんな時は、ちょっと中断してもらって
休憩をもらいますが、情けないです。
あとポーズによっては、真っ赤になることも。
ずーっと椅子に座ったりすると、自分では
見えないけど立った瞬間、赤いお尻ですね。
地味だけど、いわゆる生理現象。
僕は、水分制限すれば6時間は耐えらます。
飛行機で4~5時間は楽勝です。
身体が冷えると、スパンは短くなるけど
通常の半日モデルなら、トイレとは無縁です。
出来るならモデル中のトイレは、避けたい。
この気持ち、わかりますか?
生身の身体ですから、全部丸見え。
だから、モデル自身が気を使うことも沢山。
そして肌ケアには人一倍気を使っています。
最高の肌コンディションを提供したいです。
僕は、モデルの日は、できるだけ締め付けが
少ない下着や服で移動しています。
靴下は、履かないか超ショートなやつ。
肌トラブルは、常に細心の注意をはらいます。
見られるというのは、結構タイヘンですね。
裸なので・・・モデルへの気遣い
彫刻なら、ギリギリOKかな?
美術モデルのイメージ画像には苦労ます。
このカット。モデルの気持ちを感じるのに
ちょうどいいと思いました。
いかがですか。なんとなく解りますか?
彫刻に感情移入してみてください。
これが、生きた人間と想像してください。
モデルには心があるのをお忘れなく・・・
僕の活動範囲(超狭いけど)のアトリエは
モデルへの細かい気遣いが行き届いています。
その分、仕事は大変ですけど。
ここではモデルの希望を箇条書きしてみます。
- 室温は、モデルに合わせてほしい。
裸なので一番大事なコトです。 - 更衣室か、せめて衝立が有ると在り難い
「どうせ脱ぐ」というのは違います - 出入り口は、閉鎖か見えない工夫を
無防備状態で、外部の視線は怖いです - 見放題だけど、真剣に描いてほしい
あくまで人体描写の為に脱いでいます。 - モデル台は丈夫で清潔なものにしてほしい
不安定な台や、汚れた敷物はイヤです
意外と要望は、少ないでしょ。
たぶん、モデルした人なら「そうそう」と思う。
室温!描き手さんには悪いのですが特に冷房。
自然の寒さと違って、冷風がツライです。
熱交換する肌が、全開なのでとても冷えます。
全裸だと、体感温度が低くなります。
あと、敷物ですね。アウェイで、一度汚れた敷物
にあたってイヤでしたよ~臭いんです。
芸術の人って、意外とズボラな人も多いです。
美しい物をつくっても、アトリエは大半汚い。
絵具とか、パステルや木炭の粉は、しょうがない
でも、生身のモデルに気遣ってほしいですね。
以来、アウェイでは、敷物持参です。
最低限の環境配慮があれば、仕事なので
モデルは、辛さに耐えられます。
あとは、描き手さんの気持しだいなのですが
モデルは、彫刻じゃないと思って欲しいです。
まとめ
平気で脱いでいる様に見えますけど
様々な悩みを抱えております。
肉体的つらさもそうですが、精神面もです。
モデルも生身の普通の人間でございます。
ドライに淡々と脱げるモデルも居ますが
「その場」に慣れているだけ。
仮に、普通の場所でヤレと言われても無理。
芸術のためと割り切って了解で脱いでいるので
描くために見るのは、いくらでも構いません。
でも生身のカラダですから、ちょっとした気遣
いをしてほしいのもです。
そうすれば、モデルも快く頑張れます。
次回は、裸婦画について。
芸術かエロスか。モデルの立場で考えます。
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