美術モデルって?芸術に欠かせない大切な役割について

天使・白黒

美術モデル。アートモデルとも言います。

世間では、あまり認知されていない特殊な仕事
なので、その内容は、ミステリアス。
何といっても人前で「在りのままの姿」ですか
らイメージは、微妙ですよね。

そんな不思議な「美術モデル」の世界を、
モデルの目線でお伝えします。

 

人間の身体は、そのままでアート

ギリシャ彫刻

初めに、以前ちょっとだけ美術史にふれました
けど古代ギリシャ彫刻は、自然科学です。
神が作った人間は、そのままで美しいモノ。
という考えで、よ~く観察するのがスタート。

人間自体が「アート」なんですね。

時代はローマに移って表現も豊かになります。
そして忠実(リアル)さは受け継がれます。
やがて長~い暗黒の中世で芸術は衰退します。
美の無い世界は、暗くて下品です。

沈黙を破り、やがてルネッサンス

復古主義です。昔の良いものを取り返す。

ここから現代にいたるまで美術は発展します。

現代においても、デッサンは基本です。
芸術をかじった事ある人なら何度か人を描いた
事があると思いますが人体って難しいですね。

僕も、デッサンやクロッキーは、やりました。
もちろん「在りのまま」のモデルさんです。
女性が大半ですが、30人くらい描いたでしょう
か。男性は、骨格や筋肉を学ぶのに数人・・・

ところで正直、僕は人を描くのが苦手。

だって、人を描くのメチャ難しいんだもん!

悠然とポーズを取っているモデルさんを必死で
描く。時間的な制限もあって、けっこう、焦り
ます。なんとなくアウトラインがつかめても
あの肉体の質感というのは、厄介です。

「色」を使えば、よりリアリティーは出るけど
なんとなく納得がいかない。

それでも「それなり」には、描けるのですが
やはり、本物には、到底及びません。

描いた作品は「アート」なのですが、
モデルの姿を「模写」しているだけ。

芸術は「模倣に始まり模倣に終わる」
模倣は、悪いことじゃないです。

自然の芸術作品である「人」から学ぶ事。

美術モデルは、よけいなものを取り払うことで
自分という天然の作品を展示しているのです。

これ、モデルをしている時に教わった事です。
ポーズをとるのは、創作活動だそうです。

これは、意外な盲点でした。

モデルのポーズは、作品だったんですね。
ただ、この作品・・・長時間は見せられません
身体が持たないですから20分毎の「瞬間芸」
(瞬間というには、結構なが~いですけど)

 

 

美術モデルは、人体造形の生きた教材

美術モデル ポーズ

 

美術モデルを語る上でイメージは悩みのタネ。
あまり大っぴらに出せないですから、ソフトに
抽象的に・・・あとは、読者の想像力です。

ふんわり画像ですが、モデルのイメージです。
中性的な雰囲気のモデルさんですね。
えっ・・・ご想像にお任せします。

 

さて、本題。

モデルには、着衣とフルヌードがあります。

ここで言う「美術モデル」は後者となります。
あえて特別な言い方をするのは、特殊だから。

着衣は、不動の姿勢を取れば誰でもできます。
(それでも、人間ジッと動かないはツライ)

後者は「人体」を描くので当然「服」は邪魔。
だから、脱がなきゃいけません。

これは「ああそうですか」と誰でも出来ない。
よって、脱げるモデルは、貴重な存在。

裸体を描くのは、造形美術の基本です。

人間を描くとき、身体の構造を理解ないと、
服を着ている姿を描いても、なんとなく
不自然な感じになっちゃいます。
そのためにモデルさんを見て構造を学びます。

ネイキットな状態の方が、人体の比率や筋肉、
骨格などが、そのまま見えるので「アタリ」が
取りやすくなります。

それで肉体を見せてくれるモデルさん登場です。

ひと肌脱いでくれた心意気に感謝しつつ
ふむふむ、このポーズだと、肩の筋肉は・・・
ああ成程、身体をひねると、そうなるのか・・
と、念入りに観察します。

意外ですけど人は、人体を詳しく知りません。
身近な存在ですけど、医者か芸術家くらいしか
骨や筋肉といった構造を意識しませんよね。

初めて描くと、その情報量に圧倒されます。

 

構造を知れば、人を描きやすい

慣れない人は、顔や細部から書き始めるので
完成するとアンバランスな感じに・・・

最初は、全体を見て「アタリ」を着けます。
細かいとこは、後でじっくり描きます。

これが、服を着ているモデルの場合、構造を知
らないと正しく「アタリ」が取れていないので
人を描いているのか、服を描いているのか、
なんとも不自然になります。

そうなんです。人より覆っている服に集中して
中味(人)がおろそかに・・・

それから、想像で人を描く場合は、特に構造を
知らないと微妙な人間になっちゃいます。
ディフォルメ系ですら、基本は必要です。

お役所系のポスターに、時々「ええっ」と思う
人間?見たことありますか。
ありえない角度で手足が曲がり折れている・・
基本を知らないと、そんな感じです。

漫画やアニメは、人体構造が重要ですよね。
動きを表現するには構造を知らないと描けませ
ん。最近は、便利なポーズ集や、3Dソフトが
あるので、漫画のポーズは飛躍的に進歩しまし
た。

でも、やはり生身の質感は、モデルが一番。
ソレ系の人も、よくデッサン会で見かけます。

人体描写は、初めに裸体で覚えた方がいい

モデルは、人体構造を学ばせるための存在です

 

彫刻みたいですけど、生きています

生きた彫刻

 

美術モデルは、芸術に大いに貢献しています。

そして、ただ脱げばいいというものでもありま
せん。モデルにも芸術的な知識もセンスも必要
と思います。そしてポーズを維持する体力や精
神力も必要です。

心身ともに、思ったより過酷な仕事です。

じっと恥辱に耐え(ポーズ中は無意識ですが)
彫刻の様に動きを止めて「物」になる。
描く側は、遠慮なく観察しますけど生きた人間
なんですよね。当然「心」もあります。

平然と見えますけど、悩みは尽きません。

そうした貢献に、感謝されると素直に嬉しい。
いい勉強になった。いい作品できたと言われる
と、モデル冥利に尽きます。

 

でも、その特殊な行為ゆえに、芸術に関わる人
以外では、あまり快い印象は、持ってもらえな
いようです。

確かに、僕自身も人には、あまり言えません。
それは、後ろめたさじゃありません。悪いこと
をしている訳じゃないですから。
誇れる仕事だけど、堂々とは言えない・・・

やっぱり、恥ずかしいですから。

 

健康な肉体に宿るもの。モデルの本質

 

恥かしいなら、やらなきゃいいのに・・・
成り行きで初めてみたら、意外と好評でして
引くに引けない状況です。
期待に応えなきゃと、頑張っています。
認められると、人って理屈抜きに嬉しい。

でも、やっぱり羞恥心は、克服できません。
裸体について、ちょっと考えてみましょう。

アダムとイブの事件?以来、人間は
羞恥心を持つようになりました。
(神話だけど、例えの話しで・・・)
もはや「服」は、身体の一部です。

脱ぐ行為に、抵抗の無い人は居ないと思います

それに、宗教的な影響も大きいですね。
日本は古来、裸や性におおらかな国でした。
江戸時代は、混浴が当たり前なくらいです。
卑しいものとしては、扱っていませんでした。

それが明治から裸体を晒すはダメになります。
古代ギリシャぽかった日本が、西洋的に変化。
裸体が不健全な存在になってしまいます。
裸婦に関する作品が多い西洋においても
あえて芸術として区別して現代に至っています
(明らかに言い訳ですけどね)

しかし裸体には、需要があるのも事実です。
過去も現代も、それは変わりません。
方向は違っても、美術モデルも同じこと。
そこが、悩ましいのです。

「芸術のためです」と言っても、裸はハダカ。
見る人によっては、ある分野と変わりません。
だけど・・・それも真実です。

ある画家が語った言葉は、刺激的でした。
「芸術とエロスの線引きって曖昧なんだよね」
造形美と、とらえればアート。
欲情的に、とらえればエロス。
愛情から作品を作れば、どっち?

「肉体はエロスを内包しているから同じこと」
屈託なく笑顔で言われてガーンです。
それも、モデルしている最中に言うか?です。
「裸になるっていうのは、そういう事だよ」
あからさまに言われると複雑・・・

でもこの画家のお爺さん。モデルへの気遣いが
ハンパなくて、紳士的な振る舞いに、この人の
為ならモデルしようと思いました。
面白いので後々そのやり取りを紹介しますね。

モデルの本質が見えてきた気がします。

肉体に宿る様々な要素が、全部明らかになる

在りのままの姿とは、そういうコトです。

見る側の要因は、どうしようもないです。
これで恥かしくないって言ったら大嘘ですよ。
一番プライベートな状態を見せるんですから。

仕事と割り切らないと出来るものじゃないです

 

 

まとめ

「在りのままで働く」とは、
何一つ着飾らず、ただ自然のままの姿で。
ジッと裸でポーズを取る。それだけ。

人間には羞恥心がありますので、人前で裸にな
るのは容易いことではありません。でも誰かが
やらないと人体造形美は学べません。

例えは悪いけど医大の「献体」みたいかな。
美術モデルは、生きている生身の献体です。
意識があるのでキツイですね。

裸体は、見る人の気持ちで色々あります。
妙な気持になるのも、それは自然なことです。
「そういうこと」も含まれているのが真実。
それも「在りのまま」ということです。

裸体は、その人の偽りのない真実の姿です。

【美術モデルの役割】

  • 人体構造を学ぶための生きた教材
  • 人を描くための生きたモーチーフ
  • 人体という自然の芸術作品を展示
  • 人は生きた美術作品。

 

次回は、モデルの現場レポートです。
秘密のベールに包まれたデッサンの様子を
描かれる視点で見てみましょう。

目次へ戻る

 

お問い合わせ・ご感想など