日常の姿と美術モデル。イメージという着ぐるみ。本当の自分って何?

曖昧な印象

普段カジュアルな服装の人が、フォーマルに
ビシッツときめると、まるで別人の様に見える
ことって、ありますよね。逆に制服で見慣れて
いる人が、普段着になると一瞬、誰だかわから
なかったりします。

人は、その時のシーンに合わせて、様々な服や
アイテムで自分を演出できてしまいます。

人の印象というのは、様々な要素でどうにでも
作られてしまいます。

そんな曖昧なイメージについて、着飾ることの
出来ない美術モデルの視点から本当の自分とは
何かを考えてみたいと思います。

 

着衣モデルならバリエーション豊富?

中世風な感じ

中世の貴族風にアレンジしてみました。

こんな感じで、ファッションを変えて作り込む
なら無限にイメージが違う僕を表現することが
できちゃいます。

こうなると、ただの着せ替え人形です。

この場合なんですが・・・僕を描くというより
「服」がメイン。中身の人間は、添え物になっ
ちゃう。もちろん、その表情は、大事な絵の要
素だけどね。

着衣モデルを描いた経験がありますけど、苦労
するのは、服の模様やシワ。布の質感を表現す
るのに結構神経を使います。
裸体は、それはそれで難しいけど、服を描くの
は、案外面倒なんです。

人物を描いているのか、服を描いているのか、
わからない。極端に言うとそんな感じです。

服装がモデルのイメージを支配しています。

中国ぽい感じ

服装を変えれば、また違う僕が現れます。
今度は、ちょっとクールな雰囲気ですね。

 

その人の雰囲気を醸し出すもの

公園で

実写でなくてゴメンナサイ。
でも、このイラストは、普段の僕の雰囲気に、
かなり近いかなと思います。

服装は、いたって平凡です。あまり流行り廃り
に左右されない服をセレクトしています。
ですから、特に目立つことも無く、かといって
地味に埋没することもありません。

僕の第一印象のほとんどは、「優しそう」
「誠実そう」そんな感じです。
だいたいニコニコしているので、それが優しそ
うに繋がって、ラフな状態でも小奇麗な格好を
していることで誠実そうに見えている。

顔立ちがソフトなので、男臭さが無いというの
も優しさになっているかもしれません。

では、僕の雰囲気を分析してみましょう。

  1. 中性的な甘いマスクで色白
  2. 笑顔が多く表情が温和
  3. 物腰が静かで話し方も穏やか
  4. 背は高めで比較的スリム
  5. 髪型はショートボブに近くナチュラル
  6. 服装はシンプルだが地味すぎず清潔
  7. 高級なバックや時計は身に着けない
  8. 一通りのマナーを身に着けている

「見た目の印象」を中心に客観的にあげました

なんとなく、人となりが想像できますか?
あまり詳しく出したくないのですが、他人のイ
メージは使えないので実験台です。

 

人の印象は、一瞬で決まる

1~8をミックスして「僕」の見た目を形成。
これが、第一印象です。

視覚情報というのは、想像以上にスゴイ。
ほんの数秒で、様々な情報をキャッチして、
自分に合うか、害がないか見極めちゃう。

相手の印象の93%は見た目

視覚55%と、聴覚38%(話し方)
話す内容は、7%だそうです。

これ、メラビアンの法則といいます。
さきほどの僕の情報は全て見えるものです。

視覚的に得た様々な情報から、その人の印象を
記憶して総合的に「雰囲気」
が作られ
ています

そんな一瞬で、本当は何もわからないはず。

メージって案外いい加減なものですね。

 

イメージ(印象)は他人が作る

先ほどの視覚情報には、厳密にいうと性格など
内面も現れているのですが、見ただけでは、そ
の人の本質までは分かりません。

しかし、人は想像力を持っています。

相手の「雰囲気」から勝手に「こういう人だ」
と、内面までイメージが作られます。

「イイ人」だと思われたら、悪い気はしないの
で、より「イイ人」を演じてしまう。
作られたイメージに何時しか踊らされている。

本当の自分って、自分でもよくわからない。
特に、見た目はそうです。

服装ひとつで変わる印象。
では、服が無かったらどうなるのかな。

 

着衣と裸体で印象は、どう変わる?

着衣と脱衣比較

「着衣と脱衣・ビフォーアフター」

左は油絵を無理やりイラスト化して右と揃えて
比較しやすくしてみました。

裸体は敢えて不鮮明にしていますが、ボディー
はガチリアルです。着衣のほうは、ヒール以外
は、まあそんな感じです。

巧みな文章より一枚の絵は、インパクトありま
すね。ちょうどポーズが似ているのもGood

こうして並べてみると通常はありえない構図で
すから戸惑うと思います。

目のやり場に困る?ですよね。
そう言いながらも見るのが人というもの。
その一方で「へぇ、脱いだらもっとフェミニン
なんだね」と積極的に興味を示す人も。

普段隠れて見えないものが見えてくる時、視線
は、好奇心へ変化します。
(ただし好みの問題はあります)

デッサンで大事なのは好奇心。それが観察力に
なって創作力につながります。

その視線は、着衣時のイメージなんて生易しい
くらい興味津々に観察されちゃいます。

美術モデルは人体を学ばせる生きた教材です。
骨格はこうで、ここの筋肉はこうなっていて
脂肪の付き方はこうで、皮膚の感じはこうでと
つぶさに観察されて描かれます。

この時、描く人は、普段得られない僕の真実の
姿を視覚情報として手に入れます。

 

モデルの時の印象は?

通常、美術モデルをする時は、始まる少し前に
会場入りして準備をしているので、描き手さん
は、モデルの服装を見ていません。

開始直前にガウン一枚で現れて、すぐに脱いで
しまうので、僕の印象は初めから裸です。
つまり、日常のイメージを知りません。

さーて。真実の僕の姿は、どう見えるのか。

何度か顔を合わせている描き手さんにモデルの
僕がどう見えているのか聞いてみると、中性的
で女性みたいな雰囲気と言います。

脱ぐと、より中性的な印象が強くなるそうです

裸だと装飾するものが無いので肉体的な特徴が
印象の中心になるようです。
また、中性的な印象が強いおかげで男性モデル
特有の「特徴」が希薄になる様です。
なんか、微妙な気分ですけどね。

内面的な印象は、どうではどうでしょうか。

「真面目で我慢強くて誠実そう」「献身的」
と、見えるようです。

あれ?これは普段の僕の印象とかぶりますね。
不思議です。脱いでも変わらぬ印象は、どこか
らくるのかな。

でも真面目にモデルしていたら、そういう風に
見えるのではないかと思います。

 

在りのままの姿は、印象が強い

前に、違う記事でも書いたのですが、場所が違
い服を着た状態だと気が付かれません。
それもある程度、顔なじみの人です。

それほど、裸と着衣ではイメージが変わる。

服を着ていても中性的な感じはフェミニン男子
というくらいだから滲み出ているけど、脱ぐと
それが一層色濃く出てしまいます。

その為、一度、モデルの僕を見てしまうと服を
着た状態でも「中性的な印象」が優先して見え
てしまうようです。

僕のイメージに含まれる男女比が、着衣時には
「6:4」が脱ぐと「2:8」と大逆転してし
まいます。つまり女性的が強くなっちゃう。

見た目の変化の割合

が~ん。一応「男」なんですけど・・・

そうなると、普段の時の一応?男性の服装より
フェミニン路線かジェンダーレスのほうが好感
度が高まるという「印象の変化」が発生。

自分でも「そうなのかな~」と今までの印象が
あやふやになってくる気がします。

 

美術モデルのオーラ

僕自身、モデルを描いて感じたのは、オーラ。
堂々としていて、それでいて気取ることなく自
然。そして、一人ひとり、ちゃんと人間性みた
いのが出ているんです。

「オーラ」=「魅力」というやつです。

裸なんて、みんな同じでしょ。と思うかもしれ
ません。でも、体型的な違いだけでなく、個性
が色々見て取れます。

この点は、服と似ているかな。
同じ服を着ても、違いって出ますよね。

ネイキットな状態でも個性は、現れます。

固定したポーズに優しさとか主張とか、悲しみ
嬉しさみたいのが伝わってきます。そして眠い
疲れたとか体調も伝わってきます。

オーラといったら、何かスゴイものを連想する
と思いますけど、些細な感情や、ちょっとした
気分などもオーラとしてにじみ出るもの。

それが着衣の時よりネイキッドな状態のほうが
繊細に伝わるのかもしれません。

特別に意識的な表現をしていなくても、なんと
なく伝わってくるモデルのオーラ。
うまく言葉にできませんが、上手いモデルさん
ほどそのオーラを感じます。

 

飾れないモデルが、心掛けるもの

始めの頃は、無我夢中で余裕がありませんでし
たけど、慣れてくるにしたがって良い素材にな
ろうと色々工夫する様になりました。

もっとも気を使うのが、

特別な自分じゃなくて自然体であることです。

考えてみると裸というのは、一番自然な状態な
のですが「常識の日常」から見ると残念ながら
不自然なものになってしまいます。

一般常識はさておき、芸術的には天然の作品で
ある人体は自然な状態が美しいものです。

優れた描き手は、モデルの内面まで描くといい
ます。不安、喜び、といった感情や、モデルの
人間性など見えないものまで表現します。

先ほど書いた「オーラ」の件です。
ここでは、体調や緊張感といったものではなく
魅力としてのオーラです。

慣れない頃、よくベテランの描き手さんが優し
く声を掛けてくれたものです。
「緊張してる?リラックス、リラックス」

カッチカチに緊張して強張っていては、彫刻と
変わりません。休憩中にも、こちらの心情を察
しながら気を遣ってくれます。

なぜか?それは、自然体を描きたいから。
内面的な隠し味「個性」を加えて初めて自然な
姿を描ける?ような気がします。

でも自然体って、けっこう難しいです。

味のある魅力的なモデルになるためには、色々
修行しないといけませんね。

 

まとめ

服という「着ぐるみ」が無い状態は、想像以上
に不安な気持ちになります。正に無防備!
なんとなく本性まで洗いざらい見れれている錯
覚を覚えますけど、実は人って「皮膚」という
服を纏っているんですよね。

肌の色、質感、体型・・・みんな違います。
ダイエットで痩せたら印象は変化します。生活
の乱れは身体に表れてしまいます。
そこでモデルを初めてからは、食生活や健康管
理。ボディーケアに最新の注意を払う様になり
ました。

そのような気遣いが、身体そのものや、ポーズ
に見えるのでしょう、裸でも誠実そうとか真面
目そうと日常と変わりない印象に見られます。

その人のイメージは、単なる見た目だけでなく
もっと奥深いとこにある気がしました。

 

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