穏やかな日々を求めて(3)ウツを脱した意外なお仕事

 

明るく振る舞っている人にも、実は辛い過去が
あったりします。でも、それを乗り越えた人に
は、独特のオーラがあります。

人生、山あり谷あり。光もあれば、陰もある。

ストレスから解放されたけど、茫然自失として
いた時、ある出会いと仕事が、運命を変える
きっかけになります。

 

絵心が、運命を変えた

せっかく自由な時間を手にしたけど、
どうにも落ち着かない。

何か、好きな事でもやってみようか。
・・・・・・あ~っ、全然、思いつかない!

いわゆるウツな状態って、そんなものです。
一見平気そうに見えても、どこか壊れている。
前向きな気持ちは、あるけど逆にそれが辛い。
出来ない自分がじれったいのです。

大好きな読書も、今一つ集中力に欠ける。
普段なら、あっという間に読んじゃうのにね。
それに、妙に感動が薄い。面白くないのです。

好きなことを思い出してみよう

「久しぶりに、絵でも描いてみるか」

そういえば、何年も筆を手にしていませんでし
た。デジタル化で、余計に離れていました。
アナログな絵も、たまには、いいかな。

僕は、写真ベースの細密画が得意。パッと見ほ
とんど写真。じゃあ、写真でいいじゃん。
「え~これ、絵なの?」
というリアクションが面白いのです。

「まずは、デッサンでもしようか」
鈍った描写力を取り戻さなければ。

そう思い立ち、旧知のアーテストを訪ねてみる
ことにしました。
実は、この人。元カノの友達・・・なんです。
とても綺麗なお姉さんです。

懐かしさと期待に胸を膨らませ、アトリエへ
そこは、なんにも変らない佇まいでした。

 

アトリエのお姉さん

アトリエ

民家の離れ改造した静かな佇まいのアトリエ。
オーナーは、落ち着いた色香のある人で、長い
黒髪が印象的な女性です。

雰囲気でいうと、気だるげな感じが、ちょっと
檀蜜さんみたいな感じです。

かなり久しぶりだったけど、妖艶な雰囲気は、
健在でした。むしろ、パワーアップしたかな。
ただ、本人は無頓着。男っ気もありません。
その飾らない感じが彼女らしさなのでしょう。

ちょうど暇だったらしく、アトリエは、静かで
す。自分自身の創作活動意外に、絵画教室を開
いたり仲間の芸術家に場所を貸しているそうで
す。ちょっとした「隠れ家」みたいな感じ。

静かなアトリエで、彼女は珈琲を淹れながら、
「あなた、だいぶ苦労してきたわね。」
と、ポツリとつぶやきました。
(疲れているように見えるのかな?)

この女性は、不思議なオーラがあります。
なんとなく人を見抜いている感じがします。
けだるげな眼差しと微笑。ほとんど無表情です
が、物静かに相手の心を引き出していきます。

僕は、これまでのいきさつを少しずつ話しまし
た。なんか、港町の場末のスナックみたいな雰
囲気。

「それは、辛かったわね。」
珈琲を継足しながら彼女は、僕を見つめます。
一瞬の静寂。そして静かに言いました。

「あなた今、描かない方がいいわ。」

元々描ける人が、精神的にダメージ受けている
時は、
描けなくて逆効果だそうです。

確かに気分が乗らないと満足いく絵が描けませ
んよね。そういうことか・・・

気晴らしに芸術に触れようと思ったけど、とり
あえすは、鑑賞だけにとどめようか。
そう思った時でした。

 

僕が、美術モデル?

 

「あなた・・・来週、暇?」
彼女は、予定表を眺めながらボソッとつぶやき
ます。「ええ」と答えると、
「今度のデッサン会でモデル、してみよっか」
笑顔でサラッと言われました。

「ムリですよ、それに見せられるような身体じ
ゃないし・・・」

遠慮したつもりでしたけど、なにか断れない雰
囲気です。

ここでモデルをするとは、どんなことか知って
います。そう簡単には、引き受けられません。
それに、本当に見せる様なものでないから・・

女性なら、こうしたやり取りで「それじゃ一度
やってみようかな」
と、拍子抜けするほど簡単
に引き受けることがあります。

僕も、実際目の当たりにしたことがあります。
女性って、勇気あるというかスゴイと思いまし
た。まあ、多少は自信あって「見せてみたい」
気もあるのでしょう。

でも、男性の場合は、身体的な面もあってシビ
アです。
ほとんどの場合、引き受けないか、や
って後悔します。

「どう?一度試してみたら。何事も経験よ。」

彼女の雰囲気のせいもあるかも知れませんが、
結局、なすがままに、モデルを引き受けること
になってしまいました。

まさか、自分が美術モデルをすることになると
は夢にも思いませんでした。

「断れない」お人よしな性格は、健在でした。

 

美術モデルは、マインドフルネス

 

思わぬ成り行きで引き受けた美術モデルです。
当然のように「在りのままの姿」になる必要が
あるので、約束までの1週間の間に、自分なり
に身支度?を整えてみました。

在りのままというのは、案外難しいです。
一切のごまかしが効きませんからね。

 

話は進んで、モデル当日。

いざっ、ガウンを脱ぎモデル台の上へ。

うわっ、前ふりなしに省略しすぎ!
安心してください。後程、別な記事で詳しく書
きます。

大勢(この時は20人弱)の注目の中、ガウン
を脱ぐ瞬間は、今でも忘れられません。
緊張でドキドキしながらモデル台の上に立つと
あらかじめレクチャーされていた通りにポーズ
を取ります。

何とも心もとない気持ちと恥ずかしさが湧きあ
がりますが、一点を見つめポーズを取り動きを
止めるます。

「始まっちゃえば、意外と平気よ。」
その言葉通りでした。

 

美術モデルは、座禅みたいな感じ

え、なんにも感じない!

いえ、考える余裕が無いのです。
人間、本気で動かないのは、かなりキツイこと
です。バランスを取りながら一点を見つめてい
ると、まるで自分が自分で無い様な感じになっ
てきます。

始める前まで心配だった羞恥心は、どこに?
いえ、感じているひまが無いのです。

油断すると、すぐグラグラになりそう。
視点がぼやけてグルグル回りだす
脚や腰が痛い・・・感覚がマヒしてくる。

もう、頭の中が、真っ白!

呼吸すら気ままに出来ずに、身体の痛みにたえ
ながら
ジッとしていないといけない。
この状況、何かに似ているなあ・・・

「座禅」だ。

美術モデルは、究極のマインドフルネス。

これは、意外な発見でした。
もっとも「任務?」の最中は、考える余裕は、
ありません。やってみて、解ったことです。

座禅も瞑想も経験がありますけど、
美術モデルの瞑想には、及びもつきません。

服という自分イメージを作る「鎧」が無い姿。
もっとも開放的だけど、とても不安な状態。
その不安を打ち消す様に、ひたすらポーズを維
持することに専念します。

心の解放どころか、オールクリアです。

在りのままを見つめて、頭の中をカラにする。
意識しなくても、勝手にそうなっちゃいます。

在りのままの姿でポーズをとっているだけで、
脳内完全リセットです。

 

まとめ

美術モデルをしてみて思ったのは、予想以上に
自分が役に立てた事を実感できたことです。
大袈裟かもしれませんが新たな存在意義を見
つけた感じです。

中性的というコンプレックスが、逆にメリット
になったのも意外な発見でした。
「在りのまま」の自分を認めてもらうというの
は、素直に嬉しいものです。

それと、瞑想効果。脳が最適化されます。
瞑想というより修行に近いかもしれません。
動かないことで嫌でも「無」になれます。

そして、献身的な行いなので感謝されます。そ
のことで自己承認欲求が満たされるのかもしれ
ません。「芸術のために、ひと肌脱ぐ」そんな
感じかな。

人の役に立ち、自分の存在そのものを認めて
(褒めてもらう)ことで、自信を取り戻した。
それが、美術モデルで鬱の克服です。

なかなか誰でも体験できない美術モデルの世
界を今後お伝えしていこうかなと思います。

 

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