中性的というジャンルは、古代からあった

「人」をモチーフにした芸術作品には、
だいたい基になったモデルが存在します。

僕は、中性的な容姿が売りの美術モデルです。
男なのに女性的な曖昧さが魅力みたいですけ
ど、そうした作品が絵画にも彫刻にも存在し
ています。

今回は「中性的」について考えてみます。

 

中性的な身体でモデルになるのですか

自分で言うと自虐ですけど、まったく男らしさ
の無い身体つきです。

背が高くて肩幅も広めで華奢ではないけどガッ
チリ系とは、ほど遠い感じ。ウエストのくびれ
といい、極めつけは胸かな。

ちょっと女性的な身体のフォルムは、正直言う
とコンプレックスでした。

男性モデル=筋肉質と思っていたので、自分の
女っぽいボディじゃダメだと思っていました。

それでも一度だけ話のネタにというつもりで引
き受けてみました。

それがまさかリピートがくるなんて
自分でも驚きました。
当初は、全然続ける気は無かったんですよ。

中性的でも、モチーフとしての価値がある。

「昔の絵画や彫刻にもあるでしょ中性的な感じ
のやつ・・・創作かと思ったけど、実際にモデ
ル居たかもね。いいと思うよ。きみ。」
だって。

モデルをしてみて、予想外の反応。
認められたのは、素直に嬉しいですけど、女ら
しい部分を褒められるのは、男の気持ちとして
は複雑です。

描く側から見ると僕は珍しいモチーフです。
中性的なモデルは、希少価値ですね。
興味を抱くのは自然なことです。

では、古代の芸術から中性的なモチーフを探し
てみましょう。

 

ミロのヴィーナスのモデルは、男性かも?

「ミロのヴィーナス」

誰でも知っているギリシャ彫刻ですね。
ヘレニズム期の作品と言われています。
よく、美の基準とされる黄金比でも有名です。

裸婦デッサンをしたことある人なら気づくと思
うのですけど、この人(ヴィーナス)は、本当
に女性?と、感じます。
少なくとも、僕のまわりでは、そうです。

え、どういうコト。

女性にしてはガタイが男っぽい気がします。
お腹周り、腕の太さ(欠けてるけど)
首や肩まわりも女性とは思えません。
顔も男性的といえば、そんな気もします。

後ろ側を見ると、うーん。微妙。

既成概念で女性と思い込んで見てるとそんなに
気にもならないけど素直にジッと見れば違和感
ありますよ。

女性にしてはゴツイ感じ。

他の女性の彫刻見れば分かりますが、あきらか
に女性は女性を表現しています。
因みに、この頃の作品で女性の全裸は滅多に
ありません。だいたい一部を隠しています。
全開なのは男性のみです。
女性の像が増えるのは、ローマ時代から。

ミロのヴィーナスは、現代では「美の象徴」と
言われながら、この曖昧な雰囲気には、何か秘
密が隠されています。

古代ギリシャは男尊女卑が強い時代です。
女性が肌を晒すのはダメだったみたいです。
女神の像でも服を纏っています。
このあたり、ローマと混同しがちですね。

もしや、女性だとまずいから中性的にした?

では、謎に迫ってみましょう。

 

不思議なギリシャ・ローマ彫刻

ermafrdito2

もっと面白い彫刻があるんだよ。
と、見せられた写真がこれ。

「眠れるヘルマプロディートス」

女性の色っぽい後ろ姿ですね。
ま、よくありそうなギリシャ彫刻なんですが、
実はこれ、とんでもない代物なのです。

Hermaphroditos(ヘルマプロディートス)

ギリシャ神話に登場する神様です。

お父さんが「ヘルメース」お母さんが「アプロ
ディーテ」両親に似てすこぶる美少年だったそ
うな。ある日、森で泉の妖精「サルマキス」と
出会います。(サルマキスは女です)
彼女は、美少年をたいそう気にり誘惑してきま
す。そして、彼が水浴びをしている時に、サル
マキスは、少年を襲ってしまいます。
惚れた彼女が、離れ離れは、いやじゃと神に祈
ると二人の身体は、ひとつに融合してしまいま
したとさ。

名前の意味は、両親にちなんでいますが
美しい女体を持った美少年の意味も持ちます。

参考:wikipedia

 

彫刻の正面を見せたいのですが、言葉だけにし
ます。正面に回ると、ふくよかな女性の胸があ
ります。女性なんだから普通ですよね。
ところが視線を下腹部に移動させると・・・
アレッ、不思議なものがある!なぜ?
そう、男性の大事なものがあるのです。
世にも奇妙な彫刻なのです。

これ、一体ならそれほど驚きません。

それが、探すと色々あるんですよ。

 

中性的なもの

ヘルマプロディートスと思われる彫刻は、他に
もあります。中には、ちょっとお見せできなの
もあります。

上の写真は、ギリギリでカットしてあるけど、
ちゃんとあります。アレが。

この彫刻もそうですよね。体つきが、やや男性
的だとおもいませんか。
画像はカットしてますが、目の当たりに見ると
「どっちやねん」という感じ。

想像上の神様なので創作物ではあるけどギリシ
ャ彫刻は、見事にリアルですよね。細部まで丹
念に作られています。

作品としてはフィクションでも、確実にモデル
を観察して
作られていると思います。

今も昔も中性的な憧れがある?

それにしても、この神様、人気あったのかな。
気になって、もっと調べてみました。

「ヘルマプロディートス」の様な極端なもので
なくても中性的な雰囲気の作品は予想以上にあ
りました。

筋骨隆々な作品も多数あるので、中性的な作品
は、明らかに別物です。

当時の男性は、今と違ってかなり鍛えていると
思います。大抵は筋肉質な感じだったのではな
いでしょうか。でも、女性的な男性像が存在し
ています。なぜ男性像なのに、艶っぽい表現に
するのか。

中性的な雰囲気を好む嗜好性

現代でも、ジェンダーレスやユニセックスとい
った性差を超えた価値観があります。
二次元世界では、どっちだか判別できないキャ
ラがけっこう出てきますよね。
少女マンガは、特にそうです。

神話系の絵画にも多くの中性的男性が登場しま
す。古代から中世そして現代へと、中性的表現
が息づいているのはなぜでしょう。

インドや日本にも中性的な雰囲気の神様や仏像
があります。

古代ギリシャでは中性的を良しとしたのかな。

中性的には、神秘性や昧な妖しさといった
魅力が秘められているようです。

 

なぜ中性的を求めたのか

これも、カットしていますけど、男性のアレが
在ります。僕の身体は、この像にけっこう近い
そうです。リアルは出せないので、想像してく
ださいませ。

美術を学んでいくと、時代ごとの女性像が見え
ます。ある時代は、ふくよかさが女性の基準だ
ったようです。そこには「女は子を産むモノ」
が感じられます。

かつての女性の地位は、現在に比べて想像以上
に低いものでした。
古代ギリシャなど中流階級の女性でもです。
「太っていて丈夫な身体」が価値基準でした。

また卑しいものと見ていたので「美」=「善」
の考えに合わなかったのでしょう。
それで敢えて「女神」としての女性像を作った
のでしょう。

美意識は、時代とともに変わっていくと言いま
すが、少なくとも、ギリシャ・ローマ彫刻を見
ていると太った女性は、少ないような気がしま
す。現代に比べれば肉付きがいいですけど、現
代人が見てもそんなに違和感はありません。

男性目線で「イイ女」は、時代が変わっても
それほど変わらない気がします。

 

なぜ中性的?リアル女性像を作れなかった理由

あれだけの彫刻技術があれば、イイ女も作りた
いのが人情。堂々とリアル女性像を作られない
匠達は、一計を案じます。

男と女の中間。曖昧な姿「中性的」なら、どや

ちょうど、そんな感じの神様もいることだし、
神への捧げもは、決まって美少年です。そして
当時の少年への趣向も関係あると思います。

リアル女 → 卑しい → 美少年はOK
女みたいな美少年 → んん~まぁええやろ。
それに、わて中性的な美少年が、めっぽう好き
やねん。ほな、作ったろ。

そんな感じだったのではないでしょうか。

多くの芸術作品は、崇高な理念はあるけど実際
は、好奇心、探究心の申し子です。

女性の露わな姿が溢れている現代だと想像でき
ないけど昔は、それを「芸術」としないと見る
事ができなかった。
グラビア写真と裸婦画は、同レベルですよ。

ただ誤解ないように申し添えると
「美しいものは美しい。そして愛でたい」

そうした需要と供給が「中性的」の神秘性を
ブランディングしていったと思います。

 

芸術と美意識

美的センスは、まず見る力です。
美しいものを美しいと感じる感性。

それと、大事なポイントはサイエンス。古代の
それは、自然科学です。人間の構造、その神秘
性をあまねく観察します。

古代ギリシャ、そしてローマ時代と、芸術は発
展します。まるで生きているような存在感の彫
刻が作られます。

ところがです。

人類にとって不幸な展開がやってきます。

写実的な美術は消え、次第に宗教的な影響が色
濃くなりフレスコ画のような平面的な作品ばか
りになります。肌の露出などとんでもない!
という時代になります。

遠近法無視、陰影なし。リアリズムは過去に追
いやられます。

美術の暗黒時代です。

あれだけ栄華を誇ったローマ文明から想像でき
ない芸術の衰退です。

色気(艶)のない妙な絵がはびこります。
ふと思ったけど、警察のポスターみたいな、構
図とか骨とか完全無視の怪しい絵。

美的センスを失った世界は、ひどいものです。

でも、裸体の多いリアルな宗教画あるよね。
それは、ずっと先の後世のものです。

時は流れ、やがてルネッサンスで、古代の芸術
が復活。宗教でタブーとされた「サイエンス」
も蘇ります。

美意識や芸術の根源は「自然観察」です。

宗教を否定はしないけど、経典の内容を読むと
誰でも一部フィクションだと解ります。
非現実的な物語を「絶対視」するから、おかし
なことになっちゃう。そういうことから非科学
的な行いが発生するのです。

自然の中にこそ本物の「美」が存在します。

観察は、科学に繋がります。古代のリアルな彫
刻は、人間観察の賜物。
人間そのものを芸術作品ととらえています。

そうした基本を踏まえたうえで「創造」があり
ます。美しさとは何かを芸術家は追い求めます
「中性的」は、その一つの結果なのかもしれま
せん。

中性的な雰囲気に生まれた人は、中性的な作品
を作る芸術家にとって貴重な存在ということに
なりますね。

 

 

まとめ

「中性的」な雰囲気。

女っぽいとか、からかわれて嫌なこともありま
した。でも考えてみれば悪い評価は無いです。
女性的も、良い意味で捉えれば綺麗と同じ。
キレイと言われて悪い気はしませんよね。

美術には、以前から多く触れてきました。
描く側から、描かれる。観察される側に。
今回、自分自身が「中性的」モデルとして関わ
改めて芸術の奥深さを知りました。

不思議な彫刻も、今回初めて知りましたけど、
妙なもので、親近感を覚え安心しました。

モデルは、自分自身が作品といいます。
描き手は、その作品を「模写」するだけ。
人間がすでに「神の作品」ということです。

中性的な姿は、その神の領域に近い存在?

では、頑張ってその希少性を伝えていきたい
と思います。

 

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